あけましておめでとうございます。
新年早々、ゲーム完成期待とわざわざ日本の反対側から反対側へ文が飛んできたので。


商工関係者がギルドを作ったり、デム・ウィッサに魔女が魔女が集まって魔都になった様に、
同職種同士で集まった方が何かと都合の良い事は多いでしょう。
全く違う職業の人に自分の専門分野の事を話しても理解できないでしょうし、相手に話されても分かりません。
理解させようとするなら多大な労力が必要で、そも理解してもらう、する必要が無い事が大半かもしれません。

大陸西端部にあるガラタ・ギネエ(ガラタ)は、中心部から延びる十字路とそれに付随する様に
設置された各種公共設備を、発展と共にそのまま延長する形で拡張された町です。
密集して複雑化した居住区が元々郊外に位置していた墓地を呑み込んでは
外縁部で墓地が再建されを繰り返したガラタの都市設計は、
慣れていない部外者には町の中に居住区と市場と墓地が無秩序に散在している様な印象を与えます。

この都市の配置は有事に在って、人がすれ違えるかどうかの狭く、
建造物の多層構造による高低差をも利用して入り組んだ街の各所を、
迅速に不死者で敷き詰める事を可能とし、
戦争における火力を大魔法に頼っていた時代においては、
強力な防衛機構として町の自治性を支えて来ました。

ガラタは死霊術師、つまり、
多くの住人が多少なりとも医学の心得を持つ医者と医学の町でもあります。

人間はしぶとくもありますが、あっさりと死にもします。
傷を治すにしたって、回復魔法それ自体には麻酔効果は無いので、
治療には大変な苦痛と共に、麻酔や酒等、薬の為の金が入り用です。
多大な対価を払って外傷を直せても感染症に苦しめられるかもしれませんし、
そう言った幾つかの重大な病気や傷に見舞われずとも、
たまたま調子が悪い時に罹った軽い風邪であっさり死ぬ事も在り得ます。

死霊術師の中には自らにある種の不死性を持たせる者も少なくありませんが、
結局のところ、何をしようが人間は人間、何時かは死と向き合わなければならない時が来るでしょう。
それはガラタの死霊術師が何よりも分かっている事です。
死の否定を主題にしたければ魔都の黒宗がそれを肯定的に見ているのですから、
理由も無く態々ガラタでやる必要がありません。

現実の現代ですら大往生を迎えるのは案外難しいとされています。
ましてや、大陸世界では名医ですらどうしようもない事の方が多いのでしょう。
末期において死を認めさせるのなら、安楽のみを考えるのならば、きっと僧侶や、
その時々の国や民族にある伝統の方が、名医よりも求められる場合もあるはずです。

だからこそ、ガラタの人々は自他の快楽に対して寛容です。
彼らは諸侯や軍隊に雇われて死霊術師として戦ったり、
医者として働いたり、学者として本を書いたりしますが、
多くの場合、争い自体を止めようとはしません。

それは彼らが戦争を仕事にしているからではなく、
彼らの多くは、ある二者間での幸福が両立しない事柄、
即ち、避け得ぬ戦い――流血でしか埋め得ない亀裂であるとか、
たとえ重大な創痍を伴おうとも解決すべき問題とか――が、
世の中には存在するのだと理解しているからです。

ガラタの人々はそう言った自他の欲望を満たす行為に寛容である反面、
”仲間を増やす”だとか、自他の所属への言及であるとかの、
他者の持つ属性へ干渉する行為に対する反感を持ってもいます。

ガラタの人は何時の間にか居着いて、ガラタの中で自分の仕事と居場所を見つけた人々やその子孫です。
勝手に仕事をしていれば、やはり勝手に知り合いが増えて、組織や仲間が何時の間にか出来上がります。
町の中に仕事や居場所が無くなれば勝手に何処かへ去っていきますし、必要のない組織は自然に消えます。
人が出入りする度に町の外側に家が建ち、そうやって大きくなったガラタです。
他人に同意を求めたり、仲間を求めたりする必要はありませんし、
この町でそう言った事を求めても望んだものを得る事はまず無いでしょう。

他の町から来た人からすれば、ガラタは排他的な町に映ったりもしますが、
それは歴史的に強い自治性を維持して来た反面、
死霊術師の町として孤立する立場にもあるガラタと言う土地の気質なのかもしれません。

はるべり2.5:サリエリの女男爵
死霊術師結社「十字路の夕食会」の主要人物、"主賓"の一人である彼女は、
北方で狼を追うにあたっては、ほぼ唯一と言って良い死霊術に関する専門家です。

土地に根差した民間伝承、ロアに精通する魔術の使い手なら、
既に出ている人物ではルターヴァノダールが居ますが、
彼女はある種のカニングフォーク、あるいはヴェドマク(ヴェドマ)などに類される人物であって、
異境のネクロマンサーたる”サリエリの女男爵”とは全く違う性質を持った人間です。

とは言え北方、最大勢力を誇るイスマン人の大多数は
「イスマン人が死ねばイスマンの土に戻るだけ」と考えていますし、
北海では各々が信仰している神々に対して見せるべき
「如何に生きて死ぬか」の方法論となる伝統を持っており、
カレリア流域世界では「己が死ねば己が死ぬだけの事」と割り切られ、
主流の死生観として死霊術はあまり流行りそうにありません。実際流行ってません。

そんな訳で今回の彼女は医者としての役割を期待されて北方に来ています。
風体や扱うモノがモノなので不潔扱いされる事の多い死霊術師ですが、
ダンジョンの奥でマッドな敵役やってる死霊術師みたく、
汚い物を汚いままにしておく事の危険は死霊術師自身がよく分かっています。

アレはお客さんにウケが良いのでやる営業です。
ラーメン屋さんの腕組み、やたら高い場所から落されるタコ焼きの鰹節、
やたら大きな火で長くやるフランベとかと似たモノです、多分。
中には血塗れでも気にしない人も居るでしょうが。

つまり、サリエリの女男爵は考えます。
大切なのは他人が自分にどの様な仕事を持ってくるか、ではなく、
自分の能力がその場所でどの様な仕事に成り得るか、であると。

そしてそれは、自分の心構えのみならず、
自分を使うべき他人がよくよく理解すべき事でもあるのだと。

彼女は特定の分野において既に十分な技能を持っています。
適切な仕事を与えれば、きちんと仕事をするでしょう。

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