ブログのHTTPSへの対応を始めるという事で、ドメイン名を変更しました。
旧アドレスでも飛んでこられるみたいですが、念の為。

私はこういうのを半年とか一年とか放置しちゃう人間なので、
今後サービスの方で仕様変更があった時、対応が遅れるかもしれません。


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北方では馬と剣があれば、最低限身を立てる事が出来る。
それらに勇気を加えられるのなら、公にさえなれる。

初代大公がそうであった様に、北方の大公は諸公の公ではなく、
帝国の干渉によって成立した勢力圏に己の権力を打ち立てる事の出来る人物です。
その権利が神から与えられた物であったとしても、
権利を君主の権勢足らしめるのは大公自身の力に他なりません。

ヴァルキリー公モズーダの様に大公の戦友である公が居れば、
あるいはギライ公(ギライ・ハーン)の様に大公の座を請求する対立者としての公が居り、
また、後のモイミスカ公ポルーシュカの様に同じ世界に並び立つ有力者としての公も居ます。

そしてポトチェフスキ老やマナスのカスランギの様に、
公の称号を必要としない人間も存在するのです。

はるべり:ベルゲルンの棟梁スチェカリー

右岸カレリアの有力なコサック集団、ベルゲルン青軍の棟梁スチェカリー。
コサックにおいては名立たる馬術の名手として、
イスマンやルーリアンでは悪名高い大盗賊として知られています。

彼女のこれまでの”戦果”に関わらず、彼女の財産は今持てる物が全てです。
即ち、自ら見込んだ駿馬と良剣、銃弾さえ弾く黒熊の毛皮で拵えた外套、
そして命を擲つ覚悟のある青軍のコサックたち――
しかし彼女より財産を持った者は多く、彼女より多くの兵を率いる軍事指導者もまた大勢居ます。

人を率いる時、指揮官には何が出来るかではなく、何を為そうとするのかが問われるのです。

ネーラファナスとの戦争以後、今日まで続く慢性的な食糧不足、
雪解けと共に起こる両岸カレリアを跨いだ狼騒動、人の不規則な移動、治安の悪化。
アルハニに常駐するイスマンの常備軍団が状況を確認しようとする慌ただしさの中、
スチェカリーは幾らかの兵と荷馬車を連れて左岸カレリアへ渡りました。

狼は殺す。

そして各々の思惑の中に在っても、
彼女は己が得られる物をより多く得て帰る事になるでしょう。

スチェカリー2