だらだらと、いつぞや没にした魔都回。

隠すつもりは無いんですが、
魔都に魔女が多いのはラテン語を日本語読みした時のダジャレです。
単なる親父ギャグなので私がラテン語得意だって事でもありません、悪しからず。
(↑発端)

注意書き。
いつもの。
理解と了承の上でどうぞ。



(↓それらしい理由付け)
魔都は高級嗜好品(アイスクリーム等)の他に奴隷も主力交易品の一つですが、
男性奴隷の方が高値で売れるのが魔都の女性比率が高くなる理由の一つです。

西部でヒゲが無いとか薄い男性は基本的には男娼の身なりですね。
あるいはその類の性癖や嗜好を持ってる人。
髪が長い、髭が整ってる(どっちもこまめな手入れが出来る人物でなければ成立しない)のは、
その人物の身分を表す端的な表現の一つ。その辺は現実と一緒。

設定が無いなり、明かされてない部分については史実を準規とするものなんじゃないですかね。
重力についての描写が無いから全員宙を自在に飛べるとか
時代モノ小説には電車の描写が無いから戦国武将や足軽たちが電車通勤してたアレみたいな。
それはそれでいいと思います。良く分からないけど。

つまり、関羽が美男子なのと同じ理屈。
劉備の義兄弟インモラルハーレム創作は別に現代から始まった話ではない云々。
良く分からないけど。

閑話休題。

一番安定して値段がつく奴隷ブランドはダーダ人。
頑健な肉体と実直な性格を併せ持っていて仕事を覚えるのが早い。
次点がジバ人と帝国人。家庭教師等の頭脳労働者として扱える高級奴隷。
帝国人自体が広範に及ぶ包括的概念であって、
それを一概にしてしまうのは困難ではあるものの、平均値が高くて安定した質が好まれます。
帝国人の騎士や貴族は高額の身代金が付く事もあるので、その手の稼業にとっては当たり付き。

無論、それ(殆どの人がヒゲを蓄える事)を逆手にとって非常に高い身分の人がそうする事もあります。
ユオーロス殿下の様などうやっても男娼には間違えられない立場の人物とか、
あるいはその共通認識を利用してハッタリ利かせる人(イェールーン)とか、
そうでもないのにヒゲの無い(顔の体毛が無くなった)スラジャールさんは凶相。

いい人だけど、ヒゲが生えてないからね。

上の二人はどっちも帝国人で、「ベスク人やジバ人とは違うぞ」っていうアピールですね。
スラジャールさんは不可抗力ですが、性根の優しい人だからなあ。いい人見つけて欲しいよねホント。

〇(西方における)奴隷?
所有されてる人の事。言葉を変えるなら奉公人とかがイメージに近いかもしれません。
雇用期間中は衣食住が雇用主によって確保される、立派な職業身分の一つ。
ジバ人のベスク海賊長、アルマリクも奴隷出身。

名前こそ海賊長ですが、民族的集団の一つであるベスク海軍の頂点の一人です。
叩き上げでございますことよ。

別に奴隷だから虐げられてるとかそういう訳ではありません。
そりゃあ、漫画とか創作物一般の記号的な奴隷みたく扱いが悪い所もあるでしょうが、
そんな事を実際にしていれば奴隷だって逃げますし、やった方も主人としての評判が落ちます。
更にそこから奴隷を買い直したり監視したりする諸々のコストは高くつきそうです。

戦奴にしろ、作中でアグニ侯がやっていた、
二人三脚みたく足を鎖で繋いで最前列に並ばせるアレは犯罪者や捕虜の処刑や見せしめで、
宮廷や自治都市などに雇われて戦う傭兵なども戦奴の範疇です。それを使うマムルークもここ。

港町で、仕事(海)に出られない子供がクズ拾いから自分を売り込むみたいな、
そういう下積みとして奴隷をやったり、あるいは怪我や老齢を理由に一線を退いた人物が、
経験を生かして家内奴隷になったり、コネがある人が資産家の知人の奴隷になったり。

あと、先述に出た家庭教師の様に、料理人や庭師、清掃人、給仕等々も多く奴隷が居ます。
奴隷でない人も居ます。区別のつかない人も居ます。
当然、「自由が欲しければ自分を買い戻せるだけの金を稼げッ!」みたいな境遇の人も居ます。

その辺の事情は十人十色、ケースバイケース。

〇魔女と奴隷
魔都で奴隷の扱いが悪いのは奴隷だからではありません。
学生身分だろうと教授身分だろうと扱いが悪いならそれは奴隷と等しく悪いのです。

魔女の印象が最悪なのは元からなので、奴隷に辛くあたろうが悪くなる評判がありません。
魔女も奴隷を買いはしますが、基本的に拐かす側なので必要ならその辺から誘拐してきます。
彼女らの評判は既に底を浚っており、これ以上の下を目指すなら掘削ドリルが必要です。

〇ワケの分からん原生林!
大陸世界において一般に広く「あそこの立木密度やべえな」で知られる”大森林”は、
大陸南部と呼称される地域の大部分を占める樹海を指すと同時に、
森林以南を大陸南部と定めた共通認識を形成する程に偉大なランドマークでもあります。

恐るべき事は、ダーダ人の伝統的な焼き払い行為や周辺諸国による林業などにも関わらず、
その森林面積が明らかな拡張を続けている点であり、コスタの都市には、
防衛設備の重点が海でなく内陸部、即ち魔都方面へ置かれている物があるとも言及されていました。
周囲にとって、圧倒的な密度を誇る大森林は現実的な質量を伴った圧力であり、
可視化された恐怖であるのです。実際、その森の奥からは魔女が人を攫いに来ますし。

更に一部の魔女はこれに便乗した植林事業に従事・促進しています。
周りにとっては嫌がらせ以外の何物でもありません。

大陸世界に森や林は数あれど、これ以上の”大森林”は存在しません。
なので大森林と言えば、それは南部大森林(魔都大森林)の事です。
通常、地球を指して一々「太陽系第三惑星の方の地球は……」などと言わないのと同じ。

大森林は神話時代から既に完成された群落として成立しており、
太古以後、急速に影響力を喪失した神族とその信奉者が、
北方の極地と共に最後に拠り所とした場所でした。

その後、追放を受けたドルガンとその一派の入植によって、
世捨て人の都である魔都の原型となる都市が開かれます。
他にも大森林には、幾つかの開けた場所があり、
その場所の更に幾つかには集落が存在しています。

〇大学万歳!
流刑者と世捨て人の集落から始まった魔都は、
その成立過程から大陸でも徹底した権力者嫌いが貫かれています。

長い魔都の歴史において制度改革はありましたが、その何れも、
共和制と民主制の範疇を彷徨うものであって、国家としての主権者を戴く事はありません。
魔都大森林は、魔都の住人たちによる「自治領」なのです。

魔都の制度は派閥の形成と、深刻なまでの対立を肯定します。
現在の学績制度による学閥統治もそうですが、選出された代表者の使い捨てを魔都の制度は推奨し、
良くも悪くも、それがどれほど偉大な人物であっても、どれほど愚鈍な政治的無能力者でも、
同じ様に使い捨てられます。

ただ一人の代表者は無論、寡頭制や合議制の代表者であっても、
自分たちの上に権力者が君臨する事を魔都は許容しません。
学究の徒の上に君臨するのは、より優れた学徒のみ。

さながらルネサンス期イタリアの秘密主義の如き、
師弟の関係を最小単位にした学閥と、
その秘密主義を守る為の学閥間の対立関係が魔都の運営の背骨です。

結束を求めて権力者に束縛される位ならば、隣人と殴り合っていた方がマシです。
不必要な他人に煩わされる位ならば、隣人など存在しない方がマシなのです。

〇魔都は学術機関であって、教育機関ではない
あらゆる偉大な成果は天才たちの中で秘匿され、僅かなお零れだけが蓄積していきます。
知識は独占した方が利益になるのなら、わざわざ明かす必要はありません。

現実の現代では特許や著作権等々、知的財産の概念がありますが、
そういった「何か良さげな物を発見したら共有した方が得になるよ!」な制度が存在しないのなら、
独占した方が莫大な富を生む場合の方が多い訳で。実際の技術者や知識人とかはそうですね。

発明者個人が「自分は利益要らないから、人類の為に上手い事やってくれ」の様な
思想の持ち主だったとかで共有してくれない限りは当然、
知ってる人間が死んでしまったら、誰かが再発明なり再発見するまではそれっきり。

サノア師はその辺の前提を壊した為に嫌われ者です。
本人は思想的には思いっきり伝統的な、ベーシックスタイルな秘密主義の魔女(元緑宗)なのに、
業績(学問を体系付ける為の編纂作業)は魔都制度の根本を切り倒す行為でした。

サノア師、保守派の緑宗からみれば伝統の破壊者だし、
革新派の多い赤宗からしてみれば天敵である保守派の首魁。

でも本人は気にしません。
このサノアこそ、空に浮かぶ北極星の如き才能であり、
それに追従し得る者は誰一人存在し得ないのじゃからな。

弟子だったメア・ベルタはその経緯もあって緑宗と赤宗をウロウロしています。
師匠? 弟子の面倒見るのが師匠の仕事じゃないんですか!?

別に学問を段階的に学べるようにしたからと言って、
サノア師は生徒に教えるのが好きな人物ではないのは作中の通り。

むしろその辺は保守的な魔女であって、
「文字が読めないなら読める様にしろ、文具が無いなら指で砂をなぞれ、
 教えて貰わなければ学べないなら勉学を志すな」の突き放した態度です。

これはサノア師だけでなく、魔都の教授の大半はそんな感じ。
学生に教えるのは各学閥の教授でも最下層の魔女。
別に授業したからって、特別に何か貰えるわけでもなし。

だったら帝国の大学とかに講師としてお呼ばれしに行ったり、あるいは、
他国の大学教授に喧嘩(学問競技)を吹っ掛けて金を巻き上げた方が楽に稼げます。
作中でも魔都の学生は授業やれ、授業やる為に瓦礫片付けろってデモやってました。
フロラント師はうんざり。教授陣に教えてクレクレやってる暇あったら勉強しろし。

でも実際、各学閥が擁する大学者、大魔道たちはそういう、
「誰にも教えられなくても誰よりも勉強し、その為に誰よりも学問に精通し、
 今も独自に学問を探求している」人ばかりなのです。

魔都はそう言った逸材を優遇する為にあり、
そうやって見出された歴代の天才たちによって魔都は支えられてきました。

そんな中で、ヨランドはどちらかと言うと学生よりの立場。
別に本人に何か崇高な理念がある訳ではありませんが、
折よくサノア師が体系付けた学問を洗い浚い大公開してくれたので、
それに便乗して私塾と公試を両方運営する、ある種マッチポンプじみた高学歴の量産をしています。

儲かった儲かった。

〇長い!
本編中の解説の途中ですが文字数制限に引っかかりそうなのでここでおしまい。